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【カレッジを終えて】想像以上の夏休みでした|生本香澄

2020年12月29日(火)

こんなことができたらいいな、と薄ぼんやり感じていたことが「大人の自由研究」でした。
社会人になって働くようになってからも、知りたいと思うことについて好きに研究したいし、わからないことはわからないと言って聞きたいし、もやもやすることは解決しなくても言葉にして外に出したいし、ゴールや目的はなくても好奇心のままに追求してみたいと思っていました。

 

同じような気持ちを持っている人はいるのではないかと思ってクルミド大学の設立と同時に呼びかけてみたところ、12名の大人たちが集まり1年間の夏休みを一緒に過ごすことになりました。

 

 

クルミド大学の特長でもある「先生はいない」「教わる場所ではなく自ら学ぶ場所」の通り、毎回のカレッジはほとんど何も決まっていないところから始まりました。
興味のあることや自分の研究に重なりそうなトピックについて話したり、どのように自由研究を進めて完成させていくか議論したり。
毎回毎回が手さぐりしながら過ごす時間で、その場に流れるエネルギーのままに形が変わっていった気がします。
個人的には「カレッジマスター」という名詞が少しだけ肩にのしかかっていましたが、別に私は教える人でも(教えられるようなことがある訳でも)ないので、どこまでも「率先して学んでいく人」として場におりました。

 

カレッジ生のみなさんは、ご自身の経験から場の進め方を提案してくれる人もいれば、他の人の意見を聴いて共感しながら安心できる場にしてくれる人も、率先して自分の興味のある分野の研究内容を共有してくれる人も、問いを発して話す場を開いてくれる人も、ほぼ毎回必ず来てその場に居てくれる人もいて、お一人おひとりのそれぞれの関わり方で場を育んでくれました。
共通して、真剣に自由に学んでいこうとする姿勢を持ってお互いを尊重しながら場を大切にしてくださったと心から感じています。
お一人おひとりがいたおかげでこの1年間の夏休みがはじまり、温かくも刺激ある時間が流れ、無事に終えられたと思います。
一緒に夏休みを過ごしてくださり、本当にありがとうございました。

 

2日にわたって各自の自由研究を発表しましたが、もう、ただただ感動してしまいました。
分野もテーマもまとめ方もバラバラですが、どの研究も共通してその人の真剣な姿勢が反映された研究成果で、内容自体もどれもとても面白く、問いや興味が次々と浮かんできました。
大人が真剣に、好奇心のおもむくままに学び、好きなように自由に形にして知識や発見や驚きを他者と共有していくことが本当にできるんだな…!と思って感動しました。
コロナのことがあり途中から集まりには参加できなくなった方もおられましたが、ご自身の場所で研究を続け、提出締切日に自由研究を提出してくれました。
その研究内容の素晴らしさもさることながら、物理的な場所は違えど「学びを追求する」という時間を共有できたことが本当に嬉しかったです。

 

私自身は「時間について」自由研究を行いました。
ここは正式な学術機関な訳でもないのだから自由に研究して好きなように文章にしてみようと思い、面白いと思った時間についての本や東洋哲学についての本から得た知識をベースに「時間から解放されることはできるのか」という問いのもと、時間を紐解きつつ時間が自分にもたらす苦しみについて向き合い、今の自分が感じる「解放」について5万字の論文を書きました(5万字は自分に課した意地でしたが読む方は辛いですね。笑)。

 

 

今でもこの自由研究がなにかの役にたつとも思えないし、「なんのためにやったの?」と聞かれても上手く答えられないですが、それでも「やってよかった」ということだけは自信を持って言えます。
大学卒業以来こんなに長い文章を書いたことはなかったし、抽象的で一見実用的ではない思考とこんなに格闘しながら自分の考えと向き合う時間を持てたことは、とても貴重な経験でした。さらに、この研究を読んで少しでも共感してくれた人がいたことだけで、本当にやってよかったと思います。
私に限らずみなさんの自由研究もそうですが、この研究の影響はたとえ今すぐに目で見えるものでないとしてもきっと必ずなにかの縁や印を刻んでいる気がしています。
いつかカレッジ以外の方にもぜひ共有できたらなとも思います。

 

次の「夏休み」についてはまだ具体的には決まっていませんが、こうした「一人ひとりが自由に学びながらゆるやかにつながる場所」は、残し続ける大切な場所なんじゃないかと一つの夏休みが終わった今、肌で感じています。
好奇心やもやもやを抱えた心のエネルギーを解放させる場所、どんな形になるかわかりませんが続いていけたらと思います。
(もしご興味のある方がいれば、ぜひ、よく胡桃堂にいる生本までお声掛けください。笑)

 

 

最終的にどうなるのか全くわからないまま始まった夏休みでしたが、人との出会いや偶然の重なり、驚く化学反応など、とても楽しく刺激的で、心が動く時間の積み重ねでした。
重ねて、こうした場所を可能にしてくださったお一人おひとりに本当に感謝しています。
大人になって、また新しい夏休みの過ごし方を知ることができました。
本当にありがとうございました!

 

生本 香澄