2017年6月、胡桃(ことう)塾という学びの場に取り組みました。
少し長くなりますが、そのときの呼びかけ文を再掲します。
クルミドコーヒーをはじめて2年くらいが経ったころ、事業計画をつくるのをやめました。こんなお店を目指そう。そのためにはこういうことから実現していこう。そんな風に成果を定義してしまうことは、そこまでの道のりを手段化してしまうと感じたからです。それは言ってみれば、自動車をつくるようなお店のつくり方だと思いました。設計図があって、そのために必要な部品や手順を考える。機能性を発揮できる部品はいい部品で、そうでない部品はダメな部品。気がつくと、人についてまでそんな考え方をしている自分がイヤになりました。
かわりに、植物を育てるようにお店をつくってはどうだろうと考えました。たとえば胡桃の種が、最後にどういう樹形を成すかは最初からは決まっていません。まかれた土や、降る雨や、さしこむ光や、飛んでくる鳥や、そうした出会いや偶然から、自然と成すべき形を成していく。そしてこういうやり方は、カフェにとても向いていたようです。スタッフやお客さんとの関わり合いから出版事業が始まったり、音楽のコンサートが始まったり、哲学カフェが始まったり。2017年、となりの駅に胡桃堂喫茶店をオープンさせることができたのも、人の縁に導かれるようにして実現したことでした。
単純な話、人間はいのちなのであって、機械ではないのです。お店も、まちも、人の成すもの。人を手段化するのではなく、一人一人異なるいのちの形をいかした何かを目指すのであれば、植物のありようから学ぶべきことはたくさんあるはず。その思いは今、確信に近いものになっています。
植物を育てるように、いのちの形をした経済・社会をつくる──このことは、なにも自分のオリジナルなアイデアではなく、古今東西、先人たちがさまざまな形で言及してきたことのように思います。それらを学び、つなぎ合わせ、できることなら体系化する。9年間、ひたすら小さな実践を積み重ねてきて今、自分の中に学びたい欲求が高まっていることを感じます。
どういう形がいいかは迷いましたが、今回その過程を外に開き、ともに学んでいく場をデザインできないかと考えました。自分の知っていること、経験してきたこと、あたためてきたアイデアはすべて提供します。そしてできれば、勉強したい人、研究したい人というより、自らも当事者としてのなんらかの実践をしている人/しようとしている人に参加してもらえたらと思っています。そうした人とであれば、身体性をともなった実感値としてより深い学びを目指せるのではないかと思いますし、その成果をそれぞれに持ち帰ってもらえるとも思うからです。
自分が懇切丁寧に何かを教えるということはしません。あくまで、自ら学ぶ力と意欲とを持った人に集まってもらいたいと思っています。自分もその一人です。熱意と緊張感とにあふれた学びの場は、きっと楽しいはずだと思います。
呼びかけの結果、16名の熱意ある仲間が集まってくれて、半年強、お互いの学びを深め合いました。自分としては、2018年11月26日、それらの学びをいったん形にするものとして、『続・ゆっくり、いそげ』の発刊に至りました。
でも、その探求はまだまだ続いています。『続・ゆっくり、いそげ』もあくまで「査読版」として発刊したもので、第6章、第7章が未筆ですし、それ以前の章についてもさらなる検討・検証が必要だと考えています。
ですので、この影山カレッジ(仮称)2019-20における自分の宿題は、この本の完成版を仕上げることです。
例えば、読み込みたいと思っている人物/書籍の例を挙げると下記です。
・ダーウィンについて(『種の起源』ほか)
・二宮尊徳について(『二宮翁夜話』福住正兄、『代表的日本人』内村鑑三ほか)
・ゲーテの自然科学について(『自然と象徴 自然科学論集』ほか)
・アマルティア・センについて(『講義 経済学と倫理学』、『人間の安全保障』ほか)
・鈴木大拙について(『日本的霊性』、『東洋的な見方』ほか)
・『ティール組織』フレデリック・ラルー
・『ホモ・ルーデンス』ホイジンガ
・AIやシンギュラリティといった事象について
もっとも、大事なのは本を読むことではなく、自分の頭で、全身で考えることだとも思っています。先人の知恵に謙虚に学ぶ姿勢は大事にしつつも、そこに自分の実感や身体性が伴わなければ、その言葉やアイデアは決して力を持ちえないでしょう。反対に言えば、どんなに拙かったとしても、それが自分にちゃんと根ざしたものであれば、その言葉やアイデアは人の心に届く力を持つと思います。
本カレッジ、お一人でも手を挙げてくださる方がいれば、開講します。
お申込み、お待ちしております。
テーマ | 植物が育つように、いのちの形をした経済・社会をつくる。 |
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カレッジマスター | 影山知明 |
アシスタント | 生本香澄 |
開催時期 | 2019年10月~2020年9月 |
開催回数 | 14回程度(+査読会3回) |
曜日・時間 | 日曜9:00~11:00を原則とする |
メインキャンパス | クルミドコーヒー、胡桃堂喫茶店など |
卒業資格 | 5万字以上の論文 |
参加費 | 132,000円(税込) |
定員 | 10名 |
最少催行人数 | 1名 |
応募〆切 | 2019年10月21日(月)24時 |
選考 | 万が一、申込者数が定員を上回った場合は、エントリーフォームの内容に基づき、カレッジマスターにおいて選考を行います。また定員内であっても、お申込みをお断りする場合があります。 |
選考結果の通知 | 2019年10月22日(火)24時までにメールでご連絡します。 |
特徴 | ・優秀者3名(最大)の論文は、クルミド出版(callsレーベル)から発刊を検討 |
日程 (予定) | 第1回 10/27(日) 論文提出期限:7/20(月)24時 (※日程は変更される可能性があります) |
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